前にドラフトから4年以内に自由契約となる選手の比率を
出したことがあるが、
MLBではどうなっているだろうか。
複数年にまたがると大変なことになるので、
今回は2012・13年の指名選手が2018年現在どのくらいいなくなっているかを見てみよう。
2012~13年のMLBドラフト指名数
まずはドラフト指名数から。
40巡まで指名が行われるMLBでは、指名数は1200人超になる。
そのうちMLB球団と契約するのは900人程度で、
最近は大学生の比率が75~80%に達している。
ただでさえ大学生の比率が増えているの*1に加えて、
大学生は85%以上が契約するのに対し高校生は半分も契約しないのが理由だ。
もっともこれは確率の関係でこうなっているだけで、
指名されたものの契約しなかった高校生の数は
大学生の2倍程度になっている。
契約しなかった高校生はこの後大学でプレーしながら
もっと上の順位での指名を目指す選手もいれば、
昨年NFLの1巡(全体10位)で指名されたパトリック・マホームズ2世*2のように
他のスポーツでプロを目指す選手もいる*3。
そしてこの2年間で契約した選手の数は、
野手重視のイメージとは違って意外と投手が多い結果になっている。
野手の早期FA(自由契約)が多いMLB
では次に、これらの選手たちがどの程度FAになっているかを見る。
ここで扱うのは現在MLBとメジャー・マイナー契約を結んでおらず、
FAになったか引退したと考えられる選手。
国内の独立リーグでプレーしている選手や
海外のリーグへ移籍した選手も自由契約側として扱う*4。
ただこれだとデータ元の表記がわかりづらかったので、
現在もメジャー・マイナーでActiveな選手の数を挙げておく。
下に出したのは既にFAとなっている選手の比率。
わずか4~5年でかなりの数の選手がいなくなっているのがわかるだろう。
高校生ですら5年で50%近く、
大学生にいたっては60%以上が4年で解雇されている。
そしてもう一つ、NPBとの顕著な違いとして挙げられるのが、
野手の解雇率だ。
投手と同じか、それ以上に早い段階で野手と契約していない。
投手よりも野手に長い時間をかけて育成しようとする日本とは状況が異なるようだ。
1~5巡指名の場合
とはいえ、上位で指名される選手の場合はまた話が変わってくる。
さすがに1巡指名の選手は早くに切られる確率は低い。
まだメジャー定着はしていなくても
マイナーで順調に成長している選手も多いだろうが、
指名で金をかけた分簡単にはあきらめたくないという心理も働くだろうし、
優秀な素材ゆえに他球団とのトレードの材料にもなりやすいことも
あるかもしれない。
しかし2巡から、特に4巡以下は早くにFAとなるケースが増えていっている。
契約した選手自体が少ないせいもあるのだろうが、
高校生でも簡単に切られる確率は高い。
こうしてみると、
やはりMLBは選手の指名数が多い反面、
早い段階でFA、すなわち自由契約になる確率も非常に高い。
つい先日には、
マイナーリーガーの賃金を抑制する法案がアメリカ議会で可決されたそうだが、
ただでさえこれだけ早いドラフト指名選手の解雇が目立つMLBだけに、
選手を使い捨てにしている感が増してきているようにも見える。
一方で、日本において「ドラフトの大量指名」を主張する人たちには
「選手は長い目で育成すべき」と主張する人もかなり多い。
彼らがこの相反する主張をどのように頭の中でまとめているのかは、
ほんの少し*5気になるところではある。