秋春制日程にくすぶる「火種」
先日、Jリーグの秋春制1年目にあたる
2026-27シーズンの日程が発表された。
8月7日に始まり、
12月19日で休止したのち翌年の2月13日に再開、
6月6日に終了する日程に対しては
「開幕が早すぎる」
「ウィンターブレイクが長すぎだ」
などの批判が非常に多かった。
中には
プレミアリーグかどこかの日程を知っていたのか
「ヨーロッパよりも早いのはおかしい」も見かけた。
このような批判が出るのはJリーグの責任だろう。
なにせリーグはファンに対して
秋春制移行の理由を
「猛暑を避ける」のほぼ一点で押し通したのだから。
またネット上には少なからずいる
野球アンチも兼ねているサッカーファン*1にとっては
最も叩きやすい「猛暑」の夏の甲子園と
同じ時期に開幕してしまう矛盾点も生じてしまうし、
2月1日に始まるプロ野球の春季キャンプより
再開が遅い点も
実際に2月を迎えた際にSNSなどで火種となりそうだ。
だが本当はどうなんだろう。
特に「ヨーロッパよりも早い」は事実なのか。
ヨーロッパにおけるリーグ開幕の時期
答えは
「ヨーロッパにあるのが五大リーグだけなら正しい」だ。

表にあるのは全て一部リーグの日程。
一番右の「試合数」はレギュラーシーズンだけで
その後のプレーオフ、順位決定リーグなどは含まれていない。
まだ具体的な日程が発表されてないリーグもあるので
それらは空欄になっている。
まずW杯の下にある
プレミアリーグ、ブンデスリーガ、セリエA、
ラ・リーガ、リーグ・アン。
このいわゆる五大リーグに関しては
たしかに開幕が遅く、
スペイン以外は8月の20日以降である。
しかし次に記した四つのリーグ。
Jリーグと五大リーグ以外で
2026年W杯の日本代表選手が所属しているリーグなのだが、
こちらのリーグは
開幕がJ1と同じかJ1よりも早い。

次に
W杯がシーズンの前後ともにない年はどうだったのか。
2024-25シーズンは
W杯が行われる今年よりもおおむね1週早い。
五大リーグだと
1週早くなってもJ1より遅い形になるが、
他のリーグは
7月か8月1週目の開幕が非常に多い。
そしてもう一つ重大なのが
ポルトガルの下にあげたリーグ。
これらは
秋春制を採用しているヨーロッパのうち
降雪量が多い国をいくつかピックアップしたものだが、
いずれもウィンターブレイクが長めで
開幕も非常に早い。
なおこれらの国と同レベルか
はるかに多い降雪量を毎年記録しているのが
日本の日本海側である。
秋春制から垣間見える「目標」と「切り捨て」
こうして見ると、
秋春制の日程批判にある
「早すぎるJリーグ開幕」
「長すぎるウィンターブレイク」の
「改善」を主張する人たちの声に従うのは、
秋春制反対の人たちが主張していた
降雪地域の切り捨てでしかないことが改めてわかる。
というより、
20チーム、18チームで構成されるJ1が
豪雪地帯のクラブに極端な不利益を与えないよう
秋春制を採用する。
日本という国の気候では
これらを全て成立させること自体に無理がありすぎ、
どれかを切り捨てざるをえないのだ。
一応Jリーグも
何とかしてこの無理のある目標を
全て成り立たせる努力は見せている。
今年の特別大会で
地区制や順位決定プレーオフを採用したり
そのプレーオフを代表の親善試合にかぶせたのは、
全チームによるホーム&アウェイ総当たり戦や
代表戦で必ずリーグを休止するといった
これまでのフォーマットを崩す実験を行い、
1シーズンの試合を消化しやすくする狙いがあったと
考えられるからだ。
ただ日本のサッカーファンは
プレーオフ前提のリーグ戦を非常に嫌う*2から、
今後このような制度を採用できる可能性は低い。
その一方で
Jリーグの別な特徴を一つ指摘するならば、
J1はチームの年俸格差が極端に少ないリーグである。
トップチームの総年俸額が高くないかわりに
下位チームの総年俸額も低くないのだ。
そんな馬鹿なと思う人も多いだろうが、
まず超金満のチームがいくつもある五大リーグは
上が高すぎるので
日本から見ればかなり高い下のほうでも
格差がかなり大きい。

ヨーロッパでその次点ぐらいに位置している
オランダやスコットランドなどだと、
上位1~3チームの総年俸が
イニエスタ在籍当時のヴィッセル並かそれ以上なのに
現在J1最下位のヴェルディと同じか
それよりもはるかに少ないチームがいくつもある。
そしてJリーグの場合、
J1下位勢とJ1を目指すJ2勢にも差がないようなのだ。
このような視点で見ると
Jリーグが秋春制を採用した最も大きな理由を説明できる。
代表強化のため、
たとえ雪国をはじめとしたいくつかのクラブを犠牲にしてでも
これまで以上に海外移籍を増やすこと。
そして
たとえ地方に限らず他のチームをいくらか犠牲にしてでも
ビッグクラブを、
ヨーロッパ五大リーグレベルとはいかなくても
せめて創設当初からJリーグが到達目標に掲げていた
オランダ・エールディヴィジの
総年俸額最上位に匹敵する程度のビッグクラブを
同じく1~3クラブぐらいは誕生させること。
これらがJリーグやサッカー協会の
現在の目標と考えられるのである。