2026年WBCで
日本代表はベスト8敗退。
敗因についてはさまざまな批判が行われてきたが、
主だった批判の一つに
「プロ野球の飛ばないボールと投高打低によるレベルの低下」があった。
しかしその一方で、
敗退から約二週間後に始まったプロ野球では
「今年は飛ぶボールだ」「打高投低だ」が
開幕戦から多発し現在に至っている。
ところでみなさんはもうお忘れかもしれない。
プロ野球開幕直後には
今と同じ
「今年は飛ぶボールだ」「打高投低すぎる」という批判が
2013年から10年近く、
毎年必ず発生していたことを。
この「打高投低」は
直前に選抜高校野球が行われるためもあってか
プロ野球アマチュア野球関係なく
日本球界全体の低レベルさを物語る根拠として
扱われることもしばしばだった。
2026年の「飛ぶボール」批判はいつから
そしてもう一つ忘れられていそうなのが、
「飛ばないボールが飛ぶボールになった」は
去年のオールスター明けにもかなり言われていたことだ。
もし本当に
去年の開幕戦と今年の開幕戦で使用されたボールに
反発係数なり抗力係数なり
何らかの大きな違いがあったとしても、
今年の開幕戦から変わったという根拠にはならないはずである。


オールスター以降ではないが
昨年7月までと8月以降のリーグ平均はとっておいたので
比べてみるとこうなった。
打球予測や速度などを見たわけではなく、
セリーグは5カード終了して対戦が一巡したが
パリーグのほうは7カード目まで全対戦が一巡せず
まだ未対戦のカードが残っているため
正確なことは言えないものの、
スタッツを見たかぎりだと
使用球が今年に入ってから変わったという根拠は
どこにもない。
IsoP(長打率-打率)やHR率は
昨年8月以降の水準とあまり変化がなく、
本当に使用球が変わったとしても
それは昨年のオールスターあたりということになる。
「打高投低」はそもそも「打高投低」なのか
ところで今年のプロ野球、
つまり昨年オールスター後のプロ野球は
そもそも打高投低と言えるのだろうか。
先ほどリンクしておいた
プロ野球、アマチュア野球の打高投低を批判している
Numberの記事は2019年開幕直後のもの。
この時期ともいろいろ比べてみよう。

まず今のプロ野球は
2018、19年当時に比べてかなり打低であることがわかる。
ではその時期のNPBは打高投低と言えるのか。
「日本球界は打高投低だから低レベル」の主張に反し
MLBはHRが極端に多くずっと打高投低である。
1995年以降のMLBで
1試合あたりのHR数が1.00を下回ったのは
2010、11、13、14年の4年、
0.90未満は2014年の0.86だけだった。
全盛になり始めた極端な守備シフトへの対抗で
フライボール革命が本格化したのがこの時期なのか、
直後にまた増え始めたHR率が
ピークに達したのがちょうど2019年。
その後も2000年代前半以上のHR率を
毎年記録しているのが現在のMLBである。
最後、一番右に載せたのは
これを書いた時点でのAtlantic Coast Conference。
つまり佐々木麟太郎が在籍している
スタンフォード大学所属のカンファレンスの平均だ。
先述の記事を書いたライターは
プロアマどちらの打高投低も批判すると同時に、
有力アマチュア選手のアメリカ留学、マイナーリーグ入りを
強硬に*1主張する論者でもある。
そんなアメリカの大学野球は2018、19年当時から
日本の高校野球よりもはるかにHRが出やすい
かなりの打高投低ではあったが、
その打高傾向がここ数年さらに加速して
とんでもない数字を記録するようになり、
高野連が低反発バットを採用した理由と同じ
非常に速い打球速度による守備陣の危険性も問題視されている。
だがそこまで打高投低な
アメリカ大学球界への留学を疑問視する人は
日本球界の「打高投低」を批判してたはずの人たちからも
全く見ることはない。
佐々木に関して言えば
このリーグ全体の打高化を踏まえても
今年はそれ以上に成績を向上させており、
順調に実力がついている事実に変わりはない。
打高投低のリーグにいることが
より打力の成長を促した可能性だってある。
問題なのは
まず今年のWBCから開幕直後、
あるいは
高校野球の「飛ぶバット」から「飛ばないバット」のように
「打高投低」「投高打低」批判に一貫したものがほとんど*2なく
主張が数ヶ月、数週間程度の短期間で二転三転する点、
そして「飛ぶボール」「飛ばないボール」にしても
「打高投低」「投高打低」にしても、
その中間にあたる「適切な環境」が
明示もされなければそもそも存在すらしていない、
そんな実にあやふやな認識に基づいて
批判が行われている点である。