①若手の「抜擢」を阻む、単純かつ決定的な要因
②上位候補の大学生二遊間か外野手
③即戦力となる先発投手
戦力・ドラフト傾向分析
過去10年の成績
2012年まで10年以上Bクラスが続いたが
段階的に強くなりリーグ三連覇も達成。
しかしここ4年は
主力の流出と衰えが続き
Bクラスに沈んでいる。
2022年の成績
交流戦で
むしろよく5勝できたなというレベルの絶不調に陥り、
最終的には
その借金8がシーズン成績に直結している。
また8月にも
投打ともにどん底に落ちて借金が膨らんだが、
逆にどちらも好調な時期に
勝ちを積み重ねられなかった。
過去10年のドラフト傾向
1位入札は
一番人気特攻と単独狙いのどちらかになっている。
くじ運は悪くないものの
外れ1位のほうでは3連敗中。
逆指名時代などによく獲りに行った
高校生投手の入札がめっきり減ったが、
最後の入札が森でその前は今村猛。
今村は主力に成長したとはいえ
「まあそうもなるか」という気にはなってくる。
2位・3位では投手、
それも大学生の指名が多く
いかにも即戦力に走っているような印象を
持たせようとする人も出てくるだろうが、
4位以下と育成では
投手も半数以上が高校生。
野手は高校生が全体の半分以上を占める。
三連覇には
2013年までの指名がかなり大きな役割を果たした。
そのあとは将来性重視の年が続いたこともあり
戦力の数は多くない。
いや指名の意図を考えれば
むしろ戦力を輩出できている部類とも言える。
またこの基準だと
とりあえず1年使われた
2018年以降の指名選手の数は
2021年の時点で非常に多かったが、
翌2022年に成果が出たと言えるのは小園だけだった。
2023年以降の開花を待とう。
野手補強ポイント
野手についての基本的な考え方
基本的な前提条件はこうだ。
- 若手は全盛期(年代表オレンジ)に向かって少しずつ成長する
- 全盛期の選手は同じぐらいの成績で推移するかゆるやかに衰える
- 全盛期を過ぎた選手は特に守備がいつ大幅に下降してもおかしくない
この前提条件を踏まえつつ
若手・中堅の具体的な成長速度やポジション適性、
ベテランの衰えかたなども含めて
補強ポイントを見定めることになる。
また
今年のドラフト候補で
ポイントに該当し
なおかつプロを志望する選手が少ない、
他のチームとの兼ね合いで
欲しい選手を予定している順位では獲れそうにない、
などといった場合には
補強ポイントを翌年以降に持ち越すこともよくある。
一回のドラフトで
補強ポイントを全て埋めきる、
投手・捕手・内野・外野のポジションを均等に獲得する、
といったことにこだわる必要はないのだ。
2022年野手陣の状況
得点力は高いものの
打撃成績があまり良くない。
というよりはこの成績で、
しかも「細かい足を使う野球をしないから点が取れない」と
あれだけ批判されていたにしては、
今シーズンは得点効率が突出して良かった。
マクブルーム、西川、上本、坂倉など
まずまずの調子の選手は何人かいたが、
坂倉以外の若手は
小園が終盤持ち直した程度にとどまった。
内野の若手は
昨年一軍で376打席使われたた林が
とんでもないレベルの絶不調に陥り、
117打席の羽月も調子が上がらなかった。
また二軍での羽月は
セカンドよりも外野、
それもセンターでの起用が多い。
なお林を一軍で使わせたい人たちには
昨年の林の二軍成績を「今年と変わらなかった」と
異常に過小評価する人が少なくない。
昨年125打席の石原と158打席の宇草も
二軍成績がかなり下がった。
こういうときにネット上でときおり目にする
「経験値リセット」は
実に便利な言葉である。
一軍で使われた若手がすぐ結果を残せなくても
全てを選手自身や各首脳陣に資質のせいにして、
自分の「若手は一軍で経験値を積めば育つ」教義だけは
一切傷つけずに済む。
社会人ルーキーの中村健と末包は
二軍平均をクリアしたものの突出しているわけではなく、
一軍スタメン定着までは
もうしばらく時間を要しそうだ。
キャッチャースタメンへの期待が大きい5年目の中村奨は
3年ぶりに二軍平均を上回った。
補強ポイント
外野はここ3年間で
鈴木誠也のMLB移籍に備えた指名を続けたので
センターとライトにも入れる選手が
20代中盤に固まっている。
そこから田村までの年代がかなり空いており
ここが補強ポイント。
また
2018年に指名された高卒勢の精査が一通り済んだ内野も
補強ポイント。
小園に何か起こった際のショートがやや不足していて、
今年絶不調でファースト起用が増えてきた林と
外野起用も多く成長がやや停滞気味の羽月は
絶対的な世代交代要員とはなっていない。
全てに対応できる存在が欲しいので
できれば大学生か社会人のショートが望ましい。
キャッチャーは
バッティングよりも経験重視という方針を
新井新監督が変えるか否かにかかっている。
変えない場合は
坂倉、石原、中村奨への本格的な世代交代が
2、3年後と想定されるので、
たとえ白濱を引退させたとしても
支配下人数は足りている。
外野と二遊間の補強ポイントをつなぐのが
中村奨と羽月。
この2人を外野兼任枠として当てはめてみると
外野の年代表の穴がピンポイントで埋まるのだ。
彼らの存在によって
外野、二遊間双方の補強ポイントを
外野・二遊間を1人ずつ、
外野2人、
二遊間2人などといった具合に
その場の流れで流動的に指名することも可能になっている。
投手補強ポイント
投手についての基本的な考え方
野手と比べて
投手は年齢による成長・衰えのばらつきが激しく、
故障や不調などからくる戦力外も早い。
また近年は
個々のイニング、登板数を抑える代わりに
投手の調子を見極めた一・二軍の入れ替えが激しく、
一軍である程度使われる主力の数そのものは激増している。
そのため
一部のドラフト評論などでも主張される
- 二軍以下で将来を見越して何年間も育成し続ける
- より力のある選手を差し置いてでも、若い投手をただ一軍で使い続ける
このような手法は
以前にもましてとりづらい。
それよりも
- 最低限の出場選手登録人数にこだわることなく、一軍で起用可能な投手の絶対数を増やしていく
- 今年台頭した若手が来年以降も活躍し続けることをあてにして、目の前の年齢(特に18歳)と将来性に特化した指名を繰り返してはいけない
これらがどのチームでも最重要課題になる。
2022年投手陣の状況
長打と四球がやや多い投手陣。
四球は2018年以降常にワーストか5位だったので
これでも今年は良くなったほうである。
勤続疲労も出ているのか
大瀬良が隔年で不安定になっている。
安定感は高い床田に故障が多いのも厄介だ。
遠藤の不調が1年で済んだ代わりに
今年は玉村が不調と、
高卒の先発が2年連続で戦力にならない。
せめて2人が1年ずつ交互に戦力になれば
まだましな未来が見えるのだが。
リリーフは
矢崎とルーキーの松本が台頭。
実績のあるベテラン勢が戦力にならず、
伸び悩みと怪我に泣いている若手も多いので
今年の一軍戦力ぐらいしか
使える選手が残っていないのがつらい。
補強ポイント
指名数の多い高卒勢は
一軍ローテにこそ毎年出てくるのだが、
そのほとんどは
翌年怪我や不調で出られなくなり
実際の活躍は数年に一度。
ローテーションで二年続くのは
大卒の即戦力と外国人ばかりになっている。
リリーフのほうは
数年かけて育成した選手が何人かいるが
やはり高卒勢は成功数が少ない。
最近上位で獲得した大学生と社会人が
そこそこ戦力になっているのに
人材不足が続いているのは
この高卒勢の不安定さも大きな要因である。
何とかして確保したいのは
即戦力の先発投手。
単に先発投手が足りないだけじゃなく、
先発で育成されている若手・中堅の中に
リリーフ適性のほうが高い選手も
何人かいるかもしれない。
そういう選手をリリーフへ回すためにも
先発の数を確保するにこしたことはないのだ。
ただ1位指名候補に絞ると
単独指名か抽選獲得が前提になり、
特攻の場合は失敗のダメージが大きい。
当時上位候補とはされていなかった
床田のような選手を
2位か3位で確保できるのが理想と思われる。
おすすめ1位候補
斉藤優汰(苫小牧中央・公言済)
過去3年間は即戦力投手を入札。
今年は
他チームの状況に合わせて
特攻でも単独指名狙いでもよし、
投手でも野手でもよし。
全てが補強ポイントになりうるので
不正解はほぼないと言っていい。
そのなかでカープの選択は
10年ぶりの高校生投手1位入札。
最近のカープの高卒投手は
高校時代に最高球速が速くない選手、
あるいはそこまで背が高くない選手のほうが
戦力になることが多いので、
不安要素はかなりある。
前回の森は
イーグルスに特攻されてしまったが
今年は既に入札がかなりばらけており、
単独指名に成功する確率は上がっている。
これまでの失敗例を
はね返す選手に育てられるか。