スポーツのあなぐら

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高卒1年目をとっかえひっかえする方法

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高卒野手1年目200打席リストの3回目。
今回は2012年から昨年の指名選手まで。

2012~18年指名高卒選手の「1年目200打席」

2012年

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使用球が変更され2011、12年ほど投高打低ではなかったはずだが、
高卒1年目に大苦戦した選手が多い年になった。
指名されたのが二刀流の大谷と育成を含めても14人と少ないほうだったので
200打席に到達した選手の比率は高い。
1年目から一軍でこれだけの数字を残した大谷と
3年目には一軍主力になっていた鈴木がやはり突出している。
一方、1年目につまづいた上の3人は
今オフで3人ともチームを離れた。

2013年

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ここからは1年目三軍の選手もカウントできるように。
指名数は支配下15人と育成3人の計18人だから、
ちょうど2/3が200打席以上を経験したことになる。
森は一軍ではしばらくDH中心でバッティングを鍛えた形。
1年目に二軍平均を上回った残る2人だが、
渡邉は3年目以降にしばらく停滞したうえに
中島卓也、レアード、田中賢介がいたためポジションが空かず。
関根は2年目に.587まで落ち込んだ。
逆に2年目に大きく数字を伸ばしたのは
二軍332打席で.898を記録した上林。

2014年

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200打席到達はこの年も11人と多いが、
育成を含めると指名が25人もいたので率としては下がった。
日本ハムの2人が平均を上回る数字を残したが、
淺間は怪我が多いこともあってなかなか一軍定着できず、
高濱も2年目以降は同じ数字の前後を行ったり来たりなうえ、
好調な年はポジションも空かないので一軍機会がほぼないままになっている。
岡本は現在でこそ一軍主力として台頭したものの、
1年目は「一軍サードで使え」と騒がれたわりにそこまででもなかった。
なお2015年に不調だった一軍サードの村田修一は一軍.683。
岡本は2年目に二軍で.835まで成績を伸ばしたが、2016年の村田は.858。
若手至上主義に必要なのは夢を見る「心の眼」である。
200打席到達者のうち、
金子が2年目、脇本が3年目で戦力外になっている。

2015年

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全指名数は支配下15人、育成4人の計19人。
14年に引き続き200打席は半数弱ということになる。
1位指名の2人はここからの伸びがいまいち。
というよりは2人ともスタッツの傾向や個人的な印象は
高校時代とあまり変わっておらず、
むしろファンやドラフト評論家の期待値が過剰なだけだと思う。
今年一軍打撃成績が最も良かったのが
開幕連続ノーヒット記録の廣岡というのもちょっと面白い結果に。

2016年

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上位2位までの高校生野手が
単純な指名だと44年ぶり、
のちのコンバートを除くと48年ぶりに1人もいなかった、
極めて珍しいドラフトになったこの年。
支配下13人育成6人のうち200打席到達は12人にのぼった。
支配下指名で200打席未満は投手出身の根本薫と
キャッチャーの石原彪、古賀優大しかいない。
根本と古賀は2年目に200打席を超えている。
その一方で今オフはこの中から大河が戦力外になり岡崎が育成へ。

2017年

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清宮と中村が1位競合、安田と村上が外れ1位競合の一昨年。
中村以外の3人は二軍で前評判通りの力を発揮し、
村上は2年目の今年一軍でもかなりの結果を残した。
また、外野から内野へコンバートされていた増田が
今シーズン二軍セカンドで.764とかなりの成長を見せ楽しみな存在に。
逆に1年目で一軍も経験した西巻は.631まで落ち込み、
来年の一軍昇格の可能性が低いと判断されたか育成行きを打診、
GMがボロクソに叩かれることになった。
高卒2年目を何人か戦力外にしても全く叩かれないチームもあるのにねえ。

2018年

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今年は支配下・育成合わせて高卒ルーキー25人中18人が200打席以上を経験、
72%は26年間で最も高い数字になった。
1位指名でも今年はかなり苦戦しており、
OPSで二軍平均を上回った場合も三振数がやたら多い選手が目立つ。
その中でかなり良い結果を出したのが山下。
ゲレーロをあっさり放出したので、
来年はレフトスタメン候補の一角と考えられているか。
200打席に達しなかった選手には
「一軍スタメンで使い続けろ」と騒がれた石橋がいる。
ただ打撃成績が絶賛されるほど良いというわけではないし、
ここまで見た
二軍成績が良くないのに1年目に一軍スタメン出場の多い高卒捕手は
だいたいその後バッティングが伸びなくなっているので、
かえって悪くないと考えてもいいんじゃなかろうか。

二軍のショートを毎年入れ替えるには

さて、
2011~16年にかけて毎年高校生ショートを指名し、
しかも毎年二軍のショートを入れ替えていたチームがある。
「育成上手」で知られる日本ハムである。
そしてこの間に指名・起用された高校生ショートは
全員1年目に200打席を突破した。
このチームはいったいどうやってそんなことを実行したのか。
ちょっと見てみよう。

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まず2011年のショートは中島が中心で二番手は杉谷と今浪。
中島はプロ入りから3年連続でショート一番手として起用されていた。
その中島が守備走塁要員として一軍に定着した2012年に
かわってショートスタメンに入ったのはルーキーの松本。
松本以外ではユーティリティ的な存在だった今浪もショートで13試合に出場した。
すさまじいのはここからだ。
2013年はルーキー森本と2年目の松本が併用される形になっていた。
正確に確認はしていないが、
おそらく森本がセカンドやサードに入る時に
松本が変わってスタメンショートになっていたのだろう。
ただ結果として松本の打席数は大幅に減少している。
翌2014年には今度は渡邉が加入し、二軍の正ショートに。
森本と松本はセカンドでの起用になった。
渡邉がシーズン途中に怪我で長期離脱したため
2人ともショートでの出場は多くなったものの、
結局ショートとしてはわずか1、2年で見切られたことになる。
2015年はルーキーの太田賢吾が二遊間で併用され
2年目の渡邉が引き続き正ショートとして育成。
しかしさらに翌年は平沼がショート一番手となり、
二番手は引き続き二遊間併用の太田。
渡邉もショートとしては3年目の時点で見切られた。
そして6年ぶりに高卒ショートの指名がなかった2017年は
太田も主にセカンドの守備要員での一軍出場が増え、
太田と平沼がショートを併用する形になった。
2017年の平沼はショート以外での出場がなく、
大卒ルーキーの石井に加えて渡邉と森本も再びショートを守ってはいるが、
あくまで二番手ショート不在によるものだろう。

そんな日本ハムの一軍ショートは、
2019年時点でもバッティングの伸び悩んでいる中島が一番手である。
石井や平沼も今シーズンの一軍打撃成績は「中島より少しいい」ぐらいで、
たまに大ポカをするためか一部のファンからやたらバッシングされるが、
守備貢献度を考えると中島の牙城は崩せないというところだろうか。
さらに今年はサードも空いていたので、
必然的に中島の出番が増える形になっている。
渡邉がセカンドのレギュラーに定着したのは良いことだが、
ショート育成については
高卒ショート乱獲と1年目二軍レギュラー固定が功を奏していないのがわかる。
しかも今のところ、他のポジションで大成する選手もあまり出ていない。
日本ハムは野手指名のほとんどが高校生なため、
将来のレギュラーも高卒選手以外がほぼ存在していない
それゆえ、野手の誰かがレギュラーになっただけで
「育成上手」とべた褒めされることになるが、
実際の育成は内野手を中心にかなり苦労している。
ハムの育成がいまいちになっていることは気づいている人も中にはいるが、
自分の「高卒・若手至上主義」を正当化したいのか
「1位指名の高卒野手が少なかったから」と逃げることも少なくない。
これもとんでもない話である。
特に最近は、1位で高卒野手を獲るには
1位抽選のくじ運も必要不可欠になっている。
「目玉選手に特攻しろ」と常日頃主張している人たちに
ただの運の悪さを「戦略が悪い」と叩かれてはたまったものではないし、
今年森敬斗を単独指名した横浜や、
何年も野手抽選を外し続けた結果
近本光司、佐藤直樹の社会人野手を1位指名した
阪神ソフトバンクも痛烈に批判するのだから、
どこをとってもダブルスタンダードもいいところなのだ。