生え抜きの若手を
丸の選択、巨人の選択ともに
全否定していない人の方が圧倒的に少ない。
丸の場合は人格否定やら何やらで、
日本では国内、特に巨人にFA移籍した選手に
必ず浴びせられる内容になっている*1。
一方、巨人へのバッシングのほうは
「目先の勝利にこだわるな」「育成を全否定した」
「清武(元GM)ならこんなことしなかった」
「重信や松原、立岡、橋本(!?)がつぶされる」
といったものが多い。
丸の場合は、2年前に陽岱鋼も獲得しているのにまたか、
と思うのも一因なのだろう。
だが、それ以前になぜか誰も注目しない点がある。
なぜ巨人は陽や丸を獲る決断をしたのか。
我慢して使い続けても
理由は一つしかない。
使い続けたセンターの若手・中堅が伸びなかったからだ。
松井秀喜がいなくなった後、
毎年のように選手が入れ替わっていたセンターへ
松本哲也が入ったのが2009年。
ただ、成長した松本もバッティングがいまいち伸びない。
2012、13年は松本と長野が併用。
正確には松本がセンター固定で、
長野がライトとセンターを行き来するオーダーだったが、
このあたりから打撃の伸びない松本に代わって徐々に橋本が入り始める。
さらに2015年以降は立岡との併用になるわけだが、
2人とも使い続けられるが打撃がさっぱり伸びなかった。
2人の打席数を見ると、打撃機会自体はかなり与えられている。
ちなみに、何かにつけてスタメン剥奪を要求される長野は、
ライトとしては物足りない2015年以降に
OPS、wOBAともリーグ平均を下回った年は一度もない。
そして陽岱鋼を獲得した昨年。
その陽は序盤故障で離脱していたため、
代わりに立岡が固定されていた。
立岡もこれで結果を残せれば
陽や長野からスタメンを奪えていたかもしれない。
しかしスタッツは結果を出すどころかキャリアワースト。
これで「使い続けなかったのが悪い」とまだ言う人は、
二度と「悪くても使い続けろとは言ってない」などと
自分に嘘をつかないようにしよう。
伸びない時にどうするか
来年の外野の状況はこうだ。
センターに入れる選手がかなり少ない。
そもそも巨人はセンター出身の外野手指名が少なく、
現在の若手・中堅では育成選手を入れても
松原と故障しがちだった村上だけ。
一軍で結果を出し始めている重信はレフトが多かった。
これまでのドラフト指名にもかなり問題があったわけだが、
結局のところ橋本と立岡が伸びなかった場合の対処が
完全に遅れてしまっていたのだ。
こう書くと巨人のフロントだけの問題に見えるが、
実際にこの問題にドラフトで対処をすると
一番怒るのは若手至上主義のファンだ。
「〇〇がいるのに即戦力で潰す気か」というやつ*2である。
さて、期待していた選手が伸びなかった時の対処法は
①新しい若手を使う
②ドラフトで即戦力候補を獲る
③新外国人選手を獲得する
④FA選手を獲る
⑤既存の中堅・ベテランで何とかする
⑥戦力外になった選手を獲る
など、手段はいくつもある。
だいたいの場合はこのうちのいくつかを併用するのだが、
今の日本、特に巨人や阪神などにやたらと多いのは
①以外の手段が頭ごなしに否定されることだ。
なんとか許されるのはせいぜい⑥ぐらいで、
③と④は常に全否定になるのがほとんど。
②は一見悪く言われそうにないのだが、
①しか見えない人たちにかかると
高校生以外の選手は常に粗探しばかりされるのが現実である。
去年の巨人や今年の阪神に対する評価がいい例だ。
辰己涼介の抽選が当たったとしてもどれだけ叩かれたやら。
今回の巨人は最終的に④の選択になったわけだが、
この「強奪」も、数ある手段の一つにすぎない。
そして現実の巨人は、松本や橋本、立岡を育成しきれなかった。
指導方法や過剰なチームバッティングの要求などなど、
問題点はいくつも指摘されることだろう。
ただ、少なくとも彼らは使われずにFA選手に潰されたのではない。
使い続けたが育たなかったのだ。
さらに長野やゲレーロがあと何年持つかもわからない。
今回の丸獲得は、これらの事実を全て把握したうえで考えなければならない。