スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

高校生の成功率が低い理由を机上で考えてみた

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今回の話はあくまで理論上の話であって、
具体的なデータなどは出てこない長い文章が続く。
それが嫌な人はブラウザバック推奨だ。

 

 

「高校生の成功率が低い」のはなぜ?

2018年のドラフト会議もいよいよ明日になった。
今年は昨年に引き続き高校生野手が大人気である。
一方で大学生や社会人の評価はすこぶる低いらしく、
中には「来年は高校生投手が当たり年だから今年は即戦力投手はいらない」
という声も結構な数見受けられる。
明日のドラフト後には、
毎年恒例の「高校生大量指名のチームは高得点」
「大学生・社会人中心、高校生少なめのチームは最低評価」の光景が、
例年よりもさらに先鋭化された上で
ほぼすべての場所で溢れかえることになりそうだ。

ところで、
「高卒選手は成功率が低いがモノになったときはでかい。
だからドラフトではとにかくスケールの大きい高校生を獲れ」とよく言われる。
しかし「高卒選手の成功率が低い」理由はなんだろうか。
こう聞いて返ってくる答えは、
「高校生の素質は見極めるのが難しいから」
「プロが安易に育成し、子ども扱いするから」
「使いやすい大卒・社会人選手ばかり起用しようとして我慢しないから」
これまでの様々な言論を見る限りでは、
おおむねこんなところだと思う。
そして彼らによれば、
「高校生を大量に指名して我慢強く使い続ければ成功する選手は増える」そうだ。
そりゃあ、高卒選手しか指名しないようにすれば
高卒選手だけが成功するのは必然
だろうけども。
さすがにそんな本音を言ってしまうのはまずいと思っているのかどうかはわからないが、
「成功率が低くても、指名数を増やせば
(成功率はそのままで)成功する選手の数が増えるはずだ」
と言うことのほうが多いか。

だが本当にそうだろうか?

本当の理由は何か?

だがもっと単純に、「高校生」の部分すらも外して考えてみよう。
ここで問題になっているのは「成功率」だ。
「成功率」は「成功した選手/指名された選手」で算出される。
ならこうは考えられないだろうか。
「高卒選手の成功率は低いんじゃなく、
これまで高校生の指名が多すぎただけじゃないのか?」
何のことはない、
分子の問題ではなく、分母の問題じゃなかろうかということだ。

これは、データを見なくても体感でも想像がつく。
高校生が多く指名された年に高卒の成功選手が多く出るという根拠はないし、
指名数が少ないのに成功者数が多い年、
指名数が多いのに成功する選手がほとんど出なかった年は
このブログでも以前いくつか挙げている。
また、これは大卒や社会人でも同じこと。
プロへ行っても成功しそうのにと思う選手も少なくはないが、
基本的には指名数が多くなっても成功者はほとんど増えず、
成功率はむしろ減っていくと考えられる。
どこで読んだかは忘れてしまったが、
アメリカのスカウトには
「有望な選手が多い年(年代?)でも大成する選手の数は変わらない」
という格言があると聞いたことがある*1
考え方としては、これに近い。

高校生・大学生・社会人の「理論的なバランスのいい指名数」

では高校生・大学生・社会人の「バランスのいい指名数」も
簡単に定義づけしてみよう。
この定義も使う人によって幅はかなり大きい。
単純な見方をすればそれぞれを1/3ずつ獲るのが理想となるはずだが、
一般的に大学生と社会人はひとくくりにされることも多く、
高校生:大卒・社会人=1:1を好バランスと看做す人はかなりの数いるだろう。
それどころか、以前マルハ時代の横浜の例で見せたように、
高校生が60%近く指名されるのが「バランス型」と考える人もいる。

では先ほどの理論に基づいた場合はどうなるか。
この場合の「バランスのいい指名数」は、
「高校生、大学生、社会人の『期待値』が同じ」
ではないだろうか。

そう考えた場合、
高校生、特に野手のほうは、
大学生・社会人より若干多めに指名しても問題はなくなるだろう。
ただし、その場合にも条件がある。
それは、大卒・社会人よりも早い段階で、
一軍スタメンとして高いレベルでの貢献が可能と考えられる選手を狙うことだ。
野手が全盛期に達する年齢は高卒・大卒・社会人で変わらない。
中には選手の貢献度を通算安打数に設定して
「これなら高校生を早くに固定させれば良い成績ではなくても通算安打数も増やせる」
と思う人もいるかもしれないが、
ここで必要なのは本当の意味で早い年齢から大活躍する
怪物的な選手のことだ。

しかも金銭の要素を見た場合、
同じ期待値の高卒と大卒・社会人の選手では
高校生のほうが高くつく
理由は以前書いたとおりで、
高卒選手が大卒・社会人より長くチームにいる間に支払われる年俸が、
彼らの契約金+1年目の年俸の金額の差分を上回るからだ。
チームとしても、
長い時間がかかりそうな高校生を闇雲に獲るのは
長期的視点から考えるとマイナスになる

一方、投手については、
先日の日経でDELTAの岡田友輔氏が
「高校生投手の成功率は低いが当たれば大物になりやすい」
と書かれていた。
おそらく過去のデータではその通りなのだろう。
成功率については今回書いた理由が考えられるが、
正直なところ「大物になりやすい」について
私は疑問を抱いている。
そして実際にDELTAと同じ分析結果から
高校生投手指名を重視して
失敗しかけたチームがあるように見えるのだ。
この点についてはいずれ書く機会を設けたいと思っている。

*1:これも正確な内容は忘れてしまった。もし知っている方がいたらソース込みでコメントしていただけるとありがたい