スポーツのあなぐら

主に野球のデータ、ドラフトについて書いていくブログ。更新頻度は気まぐれ

【再掲】2017年ドラフト総評

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ニコニコブロマガにあげたものを再構成した。
当たっているところもあれば盛大に外しているところもあるのだが、
私はこういう見方をする、あるいはしていた、ということを示すために
恥をしのんであえて再掲しておくことにした。
また、2017年のぶんに関しては総評編のほうも一緒に載せることにする。

 

 


今年は点数をつけるのはやめにした。
なお私は、1ミリ先の18歳に飛びつく指名より
3年後、5年後のチームの将来を考えた指名を好む。
あらかじめご了承いただきたい。

ロッテ

昨年に続き外れでの大競合を山室社長が引き当てたが、
これなら別に最初から安田単独でよかったのではとも思ってしまう。
このあたりはくじ運への自信がなせる業だろうか。
将来のサード候補は現在も香月がいるが、送球に難が大きいとも聞くので
当面は安田が一番手での育成になるだろうか。筒香のようなコンバートもあるかも。
投手のほうはというと、去年までの指名とあまり変わっていないような。
社会人3人ではあるが素材重視の感が否めない。しっかり育てられるだろうか。
社会人でも野手の2人は現在のチーム状況に非常にマッチした選手。
特にセンター・キャッチャー以外どこでも守れる藤岡はかなり期待がかかるだろう。

ヤクルト

一般的な知名度でいけば、2~4位が独自路線、
その後に残っていた有名選手をかき集める形になった。
野手の指名は中村悠平の後継候補争いと長打力を狙った村上獲得に、
年齢層が限界を超えている外野の即戦力として塩見、
有望な若手は多いがまだ決め手を欠く段階の内野に宮本と意図は非常にわかりやすい。
一方で投手は、蔵本や金久保など制球難の選手を集めた印象が強く、
これで投手難が改善できるかというと、今までの育成実績からは厳しいように見える。
投壊の原因は尖った素材中心の指名にあると私は思っているのだが、
チームや大下にばかり目が行っている世間一般の評価はおそらく違うのだろう。
大下は大下で不安が大きいのだが、ここは私の評価が間違っていることを祈ろう。

日本ハム

このチームはくじ運のいい人と悪い人が両極端なのだが、
木田GM補佐はいい側だったようだ。
清宮は二軍の構成にはいまいち適応してないが、
今の二軍野手陣は清宮の次を狙った長期育成を見越すのも手だろう。特に今井。
そんな二軍の二遊間は相変わらず伸び悩みが顕著だが、
ここにあえて難波を入れるということは、平沼か渡邉を一軍に置くのだろうか。
難波という選択は非常に興味深いし面白いと思う。
投手指名のほうはいろいろな意味で日本ハムらしい。
今年の投手からは久々に長く活躍できる選手を育てられるだろうか。

中日

チームの意図を考えてみると、投手全体の年齢層が25歳前後に集中するため高校生。
野手はアスリート型の2人を獲ることで早めの一軍帯同も視野に入れられる、
と指名の意味は一応理解できないこともない。
しかし見方を変えれば最近獲得してうまくいっていない大学生・社会人と
同タイプを高校生で獲っただけととれなくもない。
野手陣は京田以外との年齢層が開きすぎ、
投手は石川もスタミナがつく前に使いつぶしそうで、
期待値のわりにギャンブル性が極端に高い、5年後のチーム構成が非常に心配な指名になった。
ここまでの指名をすると、もはやこのチームに必要なのは
落合前GMができていなかった選手育成の一元化ではないだろうか。
いっそのこと、今後数年はスカウト主導で指導してみてはいかがだろう。

オリックス

まずは抽選連敗脱出おめでとうございますと言いたい。
まさか福良監督で連敗が止まるとは思わなかったが、
ファンからのヘイトをため込むことでくじ運を引き寄せていたのだろうか、
2012年当時の阪神・和田監督みたいに。
田嶋は山岡に比べてて完成度はそこまで高くなく、それ以上に疲労の蓄積が気になる。
オリックスは最近、即戦力を即刻つぶしているので
2位の鈴木共々1年目から無理だけはさせないでほしい。
あとは野手主体。社会人ショート2人に高校生を投手含めポジション万遍なく3人。
そんな中で西村の捕手指名が気になるが、現在ライトでの出場が多い彼を
キャッチャーに戻して育成するということでいいのだろうか。

巨人

昨年が投手2人外して1位野手からのあと全て投手、
今年が野手2人外して1位投手からのあと全て野手。真逆の展開となった。
社会人捕手2人は4学年の年齢差があるので年齢バランスは釣り合いがとれている。
都市対抗で同じチーム(岸田が補強)だった2人の連続指名はちょっと笑ってしまったが。
他も岡本に全てを賭けるにはあまりに心もとない内野強化に将来性の湯浅と、
補強ポイント、年齢バランスはむしろしっかり押さえた部類だろう。やや過剰だが。
外野はたしかに少ないが本来必要なセンター候補が今年は少なすぎるので仕方ない。
ところで育成選手を3年連続で8人指名したわけだが、
現在育成枠はホークスとほぼ同数で満杯状態。
つまり少なくともこの8人の枠が空くまで誰かが切られることになる。
何度も言うが、大量指名を称賛する人はいい加減この点をちゃんと書いてほしい。

楽天

立花社長は2014年まででくじ運を使い切ってしまったのか、
これまで残りものに福があった社長のところまで当たりくじ自体が回ってこなかった。
野手は清宮、村上を外してなお長打力を極端なほど重視した指名になったが、
外野2人は両方育ったとしてもどちらかがDHに回る可能性もあるだけに、
今後の外野陣はオコエの完全な一本立ちがますます重要になりそうだ。
外国人野手3人体制だっただけに、この手の野手を獲りやすい状況でもあったか。
投手は今年も不安の大きい2人を中位以下で獲ったが、
果たして高梨のような即戦力化はできるだろうか。

横浜

抽選のリスクを考慮しての東単独は非常に理にかなった選択だった。
それ以外の投手は今年も素材重視の指名。そんな中、
斎藤には同じ順位で指名された同じチームの先輩三上と同じぐらいの期待がかけられそうだ。
2位神里は予想以上に早い順位での指名で驚かされたが、
筒香、桑原、梶谷の外野陣に故障や衰え等が起こった時の代役が足りない、
少なくとも乙坂、関根、細川では補えない部分を担うということなのだろう。
あとは今年ずっと外野にいた宮本と楠本の内野手指名が気になるところ。
本格的に内野に戻して育成していくのか、
それとも内外野問わないユーティリティ的役割を期待されているのか。

西武

野手指名は地元枠でもある西川に源田の後継候補として綱島とわかりやすい指名。
西川はとにかく大胸筋の回復が最優先だろう。
この回復具合で今後のドラフト戦略も幾分変わってくるはずである。
他にも若い外野の有望株2人にファーストの主砲もいて意外とハードルは高いが。
投手のほうはそれぞれ時間がかかる可能性が考えられる面々。
投手の育成がいまいちうまくない西武ではあるが、長い目で見ることも大事だろう。
たとえば何かと牧田と比べられそうな與座。
與座は大卒だが、牧田は26歳での指名だったことを忘れてはいけない。
それにしても、5年ぶりの抽選になった渡辺SDが今年は抽選を外し、外れ指名は単独狙い。
ここ最近の1位競合回避と単独狙いは、くじ運の是非も見極めて1位戦略を練る
根本陸夫の遺産を受け継いだものだったのかもしれない。

阪神

3連続でホークスと同じ指名をし、最後の抽選で
ようやく金本監督が当たりくじを引けるチャンスを得た、といった1位入札だろうか。
谷川のような投手は阪神にしては非常に珍しい指名と言えるが、
今年調子を上げてきた石崎も前評判のわりに3年かかっただけに
そこまで悠長なことは言ってられない状況ということか。
高橋や牧の素材がどれくらいのスピードで一軍定着できるかのほうが鍵になりそう。
野手は足と守備を重視する指名で、ポジションも補強ポイントにずばりあった指名なのだが
とかくギャンブル性を求めるドラフト評論家のうけは非常に悪いようだ。
ただ熊谷に関しては、このタイプの選手が2番打者という自己犠牲の鎖を外した時に
どう伸びていくのかも見てみたい。理想形は晩年期の宮本慎也になるだろうが果たして。

ソフトバンク

今年は今までになかった抽選3連敗、
工藤監督も楽天同様、2年連続で引き当てたことでくじ運を使い果たしたか。
その後の1位吉住は事前評価からすると驚かされたが、大卒投手2人も意外。
というのも、高卒以外の投手を本指名で2人以上指名するのは4年ぶりなのだ。
フォーム・体格に大きな特徴を持った2人なので即戦力として考えている可能性があり、
盤石と思われがちなチームの投手陣に危機感を持っていることがうかがえる。
最初清宮、安田を狙ったわりに野手指名が少なかったが、
欲しい選手はあまり残っていなかったといったところだろうか。
甲斐と上林で周囲からもてはやされがちな選手の輩出スピードをもう二段は上げたい。

広島

中村に関しては何も言うまい。キャッチャー2人体制になるか、
どちらか*1がコンバートされるかはわからないが、
中村と坂倉が2人とも主力に定着した将来が来ることを祈りたい。
もう1人の野手永井は体格に見合わぬ身体能力の高さをどこまで生かせるか。
当面の目標は松山の後継か?
一方の投手は薮田で味を占めたのがよくわかる高身長と速球のオンパレード。
問題はそこに制球難も付属している選手が大半で、
なおかつこのタイプが数十年にわたってあまり育っていない点。
最近伸びてきている両高橋とは元々の完成度がまるで違う。
高卒の多いリリーフ陣も意外と実働年数が長く彼らの疲労の蓄積が心配だが、
ファームにいる若手と今年指名の彼らで間に合うかが不安材料になる。

総評

今年は、「1位が外れも全て同時入札、逆指名なしの統一ドラフト」という
現行制度になってからちょうど10年目。
総評はその点を踏まえて今年の指名を数字で振り返ってみた。
多分に私の志向が反映されているが、
まあ気楽に読んでほしい。

上位指名を振り返って

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今年は清宮が7球団競合に加えて、中村2球団、外れ指名で安田と村上が3球団と
高校生野手の1位指名が続いた。
1位に高校生野手4人はここ10年で初めてである。
さて、上位指名ではそんな高校生野手ばかり目が行きそうだが、
より希少性が高かったのは社会人野手の上位指名。
全て2位指名ではあるものの上位指名の社会人野手3人はこの10年で初、
1993年(井出竜也波留敏夫三輪隆)以来24年ぶりの出来事だった。
逆指名でも社会人野手はあまり獲得されていなかったことがわかる。
実は制度の関係上、逆指名時代には高校生野手1位指名が珍しい光景ではなく、
4人以上の指名は2002年以来(西岡剛森岡良介尾崎匡哉坂口智隆)15年ぶりで、
逆指名・自由枠時代にはこの年を含めて計3回、
嘉勢敏弘が一時期二刀流だった94年を入れると4回になる。
上位指名3人未満も高校生野手は昨年だけである。

指名全体を比較すると

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全体で見ると、今年は昨年とは打って変わって野手重視のチームが多かった。
本指名の野手数は一昨年と並んで最多タイ、育成を入れると10年で最多だ。
その野手率の高さの原動力になったのは、こちらでもやはり際立っている社会人野手。
本指名が独立リーグの選手を含めて計15人、独立リーグを除いても13人おり、
社会人野手を今年乱獲した巨人を除いても9人いる。
その巨人も指名したのは有力候補と目されていた選手ばかり。
昨年解禁された選手も何人かいるが、
今年は社会人野手にも人材が多かった様子がうかがえる。

そんなふうに大量指名されたはずの社会人野手だが、
この表を見てもわかるように数は高校生野手と同じ。
本指名の指名野手を高校・大学・社会人に分類した場合の数は
高校生がこれで9年連続最多である。
ただしこれでもドラフト評論や高卒好きのファンにとっては、
高校生野手は冷遇されている存在とされているようだ。
また今さら冷静に考えてみると、高卒選手が主力になりやすいのは
そもそも高卒中心に指名されていれば数的優位で当然じゃないかということになるが。
この10年間のドラフトで変化してきた部分は少なからずあるが、
確率・期待値を極限まで無視した高校生・素材重視の評論とファン目線は、
10年どころか数十年たっても全く変わらない部分の代表格と言えるだろう。
むしろ最近はその傾向が再び強まっている感すらある。
次の項のように多少は納得できる理由もあるにはあるのだが、
一番の理由はやはり高校野球の人気とそこから作られる知名度なのか。

即戦力投手の向かう先

投手のほうを見ると、ここ2年は社会人投手の指名比率がかなり低くなっている。
それも今年は独立リーグの本指名も目立ったため、
相対的に企業チームの投手指名が減ったことになる。
その一方で噂程度の話ではあるが、最近目立ってきたのが大学生投手の順位縛り。
これらを総合すると、社会人チームも投手の獲得にかなり苦慮しているのかもしれない。
特にここ2年の社会人投手候補を見ると、
球は速いがプロ入り解禁年に入って調子を崩すか崩したままの選手と、
エース格としてかなりの結果を残してもいるが最速が遅い(145km以下)選手に
はっきりと分かれる傾向が見られた。
解禁年に調子を崩すケースには、大卒1年目では大活躍していたタイプも多い。
大学のほうでも高卒1、2年目の投手に対して似たようなことが言われているが、
同じような1年目での使いつぶしが社会人でも行われつつあるのかもしれない。
反面、プロの場合はそこからのさらなる伸びしろが重視される上に、
最近は高校生の段階から球速のインフレが起こっている。
こうした様々な要素が相俟って、
以前にも増した素材重視の投手ドラフトが行われつつあるのだろう。
単純にプロの指名数が増えてきたのも、
他のアマチームに選手が集まらない理由の一つと思われる。

ただし現状だとまだまだプロでもそこから先の育成が追いついておらず、
ルーレットで配当の倍率が変わらないのに赤黒ではなくひたすら一点賭けを行うかのような、
確率だけを下げるギャンブルに終始してしまっている感がある。
あえてえらそうな書き方をするなら、
私の即戦力投手志向を根本的に覆す画期的な投手の分析と育成手法が確立してほしい。
というかそうならないと、ここ最近指名された投手たちも
その持っている素材の力を発揮できないままユニフォームを脱ぐ結果になりかねない。

*1:場合によっては両方?