今回はこのタイトルの通り。
前回までに何度か書いてきた過去10年間のドラフト指名傾向について、
10年の中でも特に年代による変遷に特徴があるチームについて
もう少し具体的に見てみようという話。
今のところ、残る6チームを取り上げるつもりはない。
阪神
「超変革」と銘打った金本監督の就任が2015年。
1位入札が高山、大山、清宮と3年連続野手になったことで
ドラフト指名も大幅な変革が行われた。ように見えるが、
トータルでの指名はそこまで野手重視にはなっていない。
それ以前の7年間で2位以下の野手指名がかなり多めになっているからだ。
というよりも、2015年以降は投手の指名人数を増やすことで
本指名の人数そのものが少し増えた結果、
この野手率になったといったところか。
ここ3年間で目を引くのはほぼ大学生野手しか指名していない点。
昨年、清宮と安田の抽選を外したのも大きいが、
一方で監督を叩くのに都合のいい材料になっているようだ。
金本自身が大卒3~4年目*1に併用からスタメン定着した選手でもあり、
広島時代に多数の高卒選手を見て来た経験が影響しているかもしれない。
横浜
ここは以前も取り上げたTBSとDeNAでの指名の違いをもう一度見ておこう。
DeNAになって高田GMが就任してから、
もっと言えば明確なフロント主導になってからの
大卒・社会人重視が目立っている。
「5年先、10年先を見据える指名=高校生重視」ではないことが
よくわかる。
TBS時代を改めて考えると、この時代の後半(2006年以降)は
「2年間で18歳までの年代表のバランスをとりに行くドラフト」
と言い換えてもいい。
しかしその結果は、
一軍半に満たない大卒・社会人と未熟かつ伸びづらい高卒の寄せ集めに
終始してしまった。
巨人
巨人の場合は、ここ10年間の指名を
清武球団代表(のちGM)が中心となった2008~11年、
その体制が崩れ全体の規模がやや縮小した2012~14年、
三軍制導入や諸事件など体制がまた大きく変わった2015年以降、
この3つに分類することができるだろう。
これを見ていると全く理解できないのが、
2008~2011年ドラフトの異常な評価の高さだ。
1位指名は2009~11年に事実上の逆指名で大卒・社会人選手を指名し、
本指名での投手指名が極端に多い。
一軍では坂本、松本、長野と新鋭も出始めてきたので、
その間に二軍では藤村、中井、加治前、大田、橋本、鬼屋敷らを重点的に育成する。
というふうにこの指名の理由自体を推察することはできる。
のだが、それよりも
どういうチーム事情でも野手を多く獲らないと評価を下げ、
逆指名を非常に嫌っているはずの人たちが
この時代の指名を高評価しているのが理解不能だ。
2012年以降に本指名の野手率が5割を超えているのは、
この時の指名と育成の停滞によって二軍に大きな穴が生じたことが
最大の原因と考えられる。
それでも14年まではまだ余裕を持っていたのか高校生を狙っていたが、
15年以降は一軍も一刻を争う事態に陥ったのがよくわかる。
育成でもバランス型から野手重視に変貌しているのも興味深い。
その一方で、「2012年以降から即戦力投手偏重」と批判する人を時々見かける。
上位指名に高卒投手がいないからなのだろうが、
これで「即戦力投手偏重」なのか……。
中日
ここは、落合監督時代、落合GM時代、スカウト主導の時代に分けてみよう。
このように分けてみて一つ気づいたことがある。
落合GM時代以外の年も指名がいびつすぎやしないだろうか。
野手のほうは2008~10年が思ったより大学生多めだが、
2008~12年のバランスはそこまでおかしくもない。
しかし投手は高校生投手がやけに多い。
そしてこの極端な指名が、2008年から5年連続で続いていたのだ。
この多数を占める高卒投手がほとんど伸びず、
少し伸びて使えば大怪我では投手陣も壊滅するはずである。
それに対して落合GMになってからの指名が奇妙だったのは、
崩壊した投手陣の是正に22歳以下の大社投手を集中指名したことか。
結局は、年齢的にはこれから伸び盛りのように見えて高卒も大社もみな伸び悩み、
一軍の負担が増えていく一方になってしまった。
よく叩かれている23歳以上の社会人野手指名の失敗は事実だが、
長年の投手指名の失敗が外部の識者から語られることはおそらくないだろう。
落合監督や高木監督、各投手コーチに全てかぶせてしまえば済む話だしな。
今後しばらくはスカウト主導が続きそうなので、
ドラフトは高校生偏重路線ということになるのだろうか。
ファンは憎い社会人がいなくなった高卒だらけの構成を見て満足かもしれないが、
試合と育成両方の結果を求められる一・二軍の現場や、
スカウトを含む編成の苦悩は変わらなさそうだ。
楽天
2015年に極端な野手偏重指名、
昨年は上位で清宮、村上、岩見を狙ったことで
「指名傾向が良くなった」と思っている人は多いかもしれない。
全体の指名で見ると3年間の野手率が5割に達しているが、
一方で高校生の比率が下がっている。
というか、1位指名も多かった高校生投手に対して、
2014年までの高卒野手指名も意外と多い*2。
2014年に球団社長が「投手は高卒、野手は大卒がいい」と発言した記憶があるが、
野手は指名した高卒選手の伸び悩みがその一因だったのだろうか*3。
大卒の中距離打者を育てるのは比較的得意なように見えるのだが、
高卒野手を4年で大学生レベルへ引き上げるのがうまくいかないのか。
ここ3年で若手野手の数自体はとりあえず確保したので、
今年からはまた14年頃までの指名比率に戻ることもありうる。
オリックス
オリックスの場合、2013年から指名傾向が大きく変化している。
これだけだとちょっとわかりづらいが、
まず毎年大量指名するようになった。
この5年間は最も少ない年でも本指名だけで8人を指名している*4。
次に、以前にも増して社会人と高校生に二極化しだした。
このどちらかが3人以下だったのは、2015年の高校生(2人)しかない。
最後に、投手と野手いずれかに偏る年がなくなった。
それまでは
投手偏重が2008(4:1)、2009(5:0)、
野手偏重が2010(1:4)、2011(2:6)となっていたが、
最近は最大でも6:3。
全体の指名数そのものが非常に多いので、
ここ5年間は野手を3人以上指名しない年がない状態になっている。
そうやって考えると、1年の指名の中で
年齢・投打のバランスをとっているように見えるドラフトが続いているのだが、
結果には今のところ結びついていない。