※9/3重大な追記あり
前回はリーグごとの指名傾向の違いを見てみたが、
今回はもう少しだけ具体的に、
チームによる違いを見てみることにしよう。
高卒投手指名が多いチーム
この表の数字は本指名のみ。
プロ入り後投手から野手にコンバートされた選手は野手にカウントしている*1。
9/3追記:楽天の高校生指名数に間違いがありました。
正しくは投手11、野手15です。
まずは野手から。 高校生野手の指名はロッテ以外のパリーグ全チームで多く、
大学生野手は阪神、
社会人野手はオリックスに次いで横浜と中日が二桁となっている。
社会人野手は指名が異常に少ないチームばかりなので、
偏り自体はかなり目立ったものになっているか。
とはいえヤクルトや巨人以外は、
そこまでイメージとかけ離れた指名ではないかもしれない。
一方の投手。
正直なところわかっていなかった人が多かったのではと思うのが
中日と巨人の高卒投手の多さだ。
特に中日はソフトバンクに次ぐ2番目の多さ。
高校生を極度に嫌うと決めつけられている落合氏がいた時代も
2014年以外は毎年1~2人は指名しているので1年平均は1人以上*2、
スカウト主体の年は大量指名したがるのでこのような数字になった。
巨人も投手指名の多い年に高卒投手を何人も獲る傾向がある。
反面、ソフトバンク、中日をはじめとして
これらのチームには最近投手力の弱体化が目立つチームが少なくなく、
しかもせっかく指名した高卒投手があまり育っていない。
中日は今年出てきた小笠原慎之介、藤嶋健人や活躍期間が短い若松駿太らを除くと
長い期間活躍していると言えるのは岡田俊哉のみ。
ソフトバンクにいたってはこの表が本指名だけの数字なので、
この中から今のところ1年以上活躍できているのが武田翔太1人しかいない。
偶然だと思いたい。
その中で高校生投手の指名が比較的うまくいっている広島は、
何度も言っているようにリリーフ投手が多く先発はいない。
最近出てくるようになった中村祐太や高橋昂也は
前田健太以来となる先発への定着ができるだろうか。
逆に、高卒投手指名の少ないチームはどうだろう。
これらのチームの投手成績が良くなっているという事実は
残念ながら見ることが出来ないようだ。
ただ一つだけひっかかるのが、
10年間で一桁しか指名していない3チームも、
一軍でそこそこ活躍する選手、
あるいは一軍で期待を持たせる選手の数が
他のチームとさほど変わらないということだ。
大学・社会人投手指名が多いのはパリーグ
続いていわゆる即戦力投手も見てみよう。
こちらは、極端に大社投手の指名が少ないソフトバンクを除いた
パリーグ5チームと横浜、ヤクルトの指名が多いことがわかる。
指名数だけなら本指名そのものが多い日本ハムが僅差でトップ。
また本指名全体の大卒・社会人投手の比率はというと、
これは表に右側にある①になる。
ロッテ、西武がかなり多く、次いでヤクルト、日本ハム、横浜が40%台。
高卒投手が少ない阪神は野手指名自体が多い*3こともあって
楽天・オリックスよりも下の数字になり、
逆に野手指名の少ない広島は人数に対してやや高めの数字になった。
むしろソフトバンク、中日、巨人の比率が極端に低いといったところか。
一方でこちらも、指名数に対して成功者は若干の逆転現象が見られる。
指名の多いチームがいまひとつなケースは言わずもがなだが、
社会人投手の指名が少ないソフトバンクは特にその傾向が強い。
摂津正、金無英、嘉弥真新也、山中浩史、加治屋蓮、森唯斗、岡本健と、
まだ長く活躍できていない選手が何人か含まれているが、
1、2年単位で見た場合は全員が一応戦力になっている。
巷の言説と現実の食い違い
今回の内容を簡単にまとめるとこういうことになる。
- 野手の指名は高校生がパリーグに多く、
大学生は阪神、社会人はオリックス、横浜、中日が多い - 高校生投手はソフトバンク、中日、広島、巨人が多い
- ソフトバンク以外のパリーグは大学生・社会人投手の指名が多い
- 高校生(社会人)投手の指名が多いチームが、
多く指名した選手たちの育成を得意としているわけではない
最後の点は、野手指名に置き換えても当てはまる。
なにせ、広島、西武と野手指名率の低いチームが現在両リーグの得点トップである*4。
「何を当たり前のことを言っているんだ」と
この結論を馬鹿にする人も多いと思うが、
こういうことをわざわざ書かねばならないのは、
その当たり前が当たり前じゃないからだ。
ドラフトの世界は、常に
「高校生の成功率が低くないならもっと指名すれば成功者数もそれだけ増える」
と言われ続ける世界なのだから*5。