ニコニコのブロマガを再構成した。
都市対抗が終わり、高校野球も各地区で代表が決まっている。
高校生と社会人のドラフト候補もある程度評価が見えてきたころではあるだろうか。
とはいえ、実際のプロのスカウトはどうかわからないが、
一般のファンやマニア、一部の評論家は大学生と社会人の候補を減算方式、
高校生を加算方式で評価する傾向がある。
社会人No.1評価だった齋藤や吉川などの評価もおそらく下がっていった反面、
ここから甲子園大会まで高校生の評価はさらにインフレを起こしていくことだろう。
今回は、高校生の当たり年はいったいどういうものなのか、
野手と投手の場合に分けて見てみたいと思う。
まずは野手編。
対象は普段よりも少しさかのぼり、
ドラフト全体の高校生偏重志向が落ち着いてきた1989年からとする。
なお今回は実際の高卒野手の成功選手数に注目していくぞ。
大当たり年
1989年
主な選手:前田智徳、新庄剛志、種田仁、吉岡雄二、浅井樹、井上一樹、野口寿浩、宮地克彦
最初は89年。
野茂英雄に8球団が競合、
高校生1位指名はダイエーを拒否した元木大介1人と
極端な大社偏重年に見えるが、高卒野手もなかなかの当たり年。
井上や宮地など時間のかかった選手もいるがかなりのものである。
ただし入団者数が32人*1もいたため、
成功率のほうはあまり高くはない年でもある。
1993年
主な選手:松井和夫、金子誠、大村直之、福浦和也、福地和広、平尾博司、大塚明、立川隆史
次にあげるのは逆指名初年の93年。
逆指名入団が18人、高校生の上位指名はわずか5人という年だったが、
この年最後の指名となった福浦など3位以下に当たりの野手が続出した。
上にあげた選手のうち、2位指名は平尾と立川の2人。
1994年
主な選手:城島健司、大村三郎、多村仁、小関竜也、嶋重宣、相川亮二、橋本将、斉藤宜之、田中秀太
前年に続き高卒野手の大当たり年となった。
1位での逆指名はわずか4人。紀田彰一と嘉勢敏弘がそれぞれ2球団競合で
上にあげた選手でも城島、大村が1位、小関、嶋(投手入団)が2位指名だった。
93、94年の2年間は成功率も5割弱に達する計算になる。
1996年
主な選手:岩村明憲、森野将彦、高橋信二、関本健太郎、濱中治、石井義人、鈴木尚広
この前の95年が福留孝介7球団競合だったが、
当たり年は競合なしのこの年。
この年は高校生指名が少なく全体でもたったの12人。
その中でこれだけ成功者が続出したのはすごいことである。
一方の大学生・社会人も井口忠仁、松中信彦、今岡誠、谷佳知、
柴原洋、磯部公一、小笠原道大、和田一浩、小坂誠らが揃い、
野手自体が史上まれに見る大豊作の年だった。
2005年
主な選手:陽仲寿、平田良介、岡田貴弘、川端慎吾、宇部銀次、前田大和、炭谷銀仁朗、枡田慎太郎
しばらく高卒野手はあまり当たらない年が続いたが、久々に大当たりと言えるのがこの年。
分離ドラフト1年目で、マニア人気自体は年初から高校生投手に集中していた年だが、
投手が軒並み伸び悩む一方で野手が伸びた。
惜しいのは開花までに皆時間がかかったところか。
一番早い選手でも5年目、
それもそこそこ一軍に呼ばれ続けてずっと結果を残せなかったパターンばかりだ。
大当たり年次点
1998年
主な選手:東出輝裕、森本稀哲、赤田将吾、古木克明、小池正晃、實松一成
いわゆる「松坂世代」の年。
当時のドラフトマニアにとっては高校生一辺倒の年*2だったようだが、
野手は大成まで時間がかかる、
一軍スタメンで使われ続けたが伸び悩むなど、
名前の挙がる選手はそれなりの数になったものの
前評判と比べると意外と微妙な年である。
大学や社会人に進む選手が多かったせいもあるのだろうが、
指名数が13人(その後野手転向が+2人)にとどまったのも何となく頷ける。
2006年
主な選手:坂本勇人、梶谷隆幸、堂上直倫、上田剛史、会澤翼、福田秀平、福田永将
「ハンカチ世代」などと呼ばれたこの年。
坂本が早々に一軍定着したが
それ以外の野手は3球団競合の堂上をはじめ軒並み時間がかかった。
ただ毎年準レギュラーか併用という選手が多いので、意外と通算成績は伸びるかもしれない。
そういえば2010年以降のこの世代トップに対する評価もあいまってか、
最近は「世代」という言葉があまり使われなくなった気がする。
ここまでは当たり年を見てきたが、実は高卒野手の大外れ年も存在する。
こちらも見ていこう。
大外れ年
1997年
主な選手:飯山裕志、渡辺正人
指名数は逆指名制度以降の5年間では最多の19人(のち22人)。
上位指名も2位で3球団競合の新沼慎二や1位の渡辺、中谷仁など計6人いるのだが、
これがまさかの大外れ年に。
何とか当たりと言えなくもないのが守備・代走要員の上2人しかいない。
なお大学生と社会人には高橋由伸、坪井智哉と1年目から活躍する野手もいたが、
他は井端弘和と倉義和が挙がる程度。
前年までに当たり年が続いたことで、
彼らの厚い壁に阻まれた選手も多かったのかもしれない。
2003年
主な選手:明石健志、城所龍麿、堂上剛裕
自由枠候補は鳥谷敬と馬原孝浩以外評価が上がらず、
高校生では事実上の逆指名に対して強行指名が出るなど何かと話題も多かった年。
自由枠11人以外の上位指名は12人が高校生(野手5人)だったが、
規定打席到達経験者は明石1人で残る2人は控えが主体。
2004年
主な選手:石川雄洋、江川智晃
高校生野手の上位指名は江川1人で、高卒野手計10人は今回の対象年中最少の数字。
しかしこの結果を見るとスタメン定着が石川1人で、納得のいく指名人数でもあった。
たとえば1年目の楽天などは高校生指名が0だったことをひどく叩かれていたが、
何人か指名しても成功者なしに終わった可能性が大である。
高卒野手当たり年の特徴
奇妙な特徴として見られるのは、
超大物高卒野手がいる年は大当たり年にならないことだ。
いわゆる「世代」の考え方*3でいけば
もっと成功者が多くなるはずだが、現実にはそうはなっていない。
分離とはいえ中田翔に4球団が競合した2007年*4は
まだいいほう(丸佳浩、中村晃、伊藤光、安部友裕)で、
福留孝介が7球団競合した1995年は他に荒木雅博と日高剛、
松井4球団競合の92年も塩谷和彦、西浦克拓がいる程度。
かなり昔の話だが、清原和博が5球団競合した1985年にいたっては
他に西山秀二ぐらいしかいない。
85年と92年の場合は4年後に大卒でプロ入りした選手が充実したととれなくもないが、
同期の高卒プロ入りだと大成できない選手がやけに多い*5のだ。
この3つの年はむしろその前後に当たり年があるという点が共通している
*6ので、理由としてはこちらのほうが正解に近いのかもしれない。
いずれにせよ、
高校生を大量指名すべき理由として挙げられやすい「同学年のライバルの存在」は、
選手たち自身には当然刺激になっているのだろうが、
実際の大成とは全く関係がないようだ。
清宮幸太郎フィーバーの昨年は果たしてどうなるだろう。
清宮以外にも村上宗隆や安田尚憲などはアピールしているが、
この他にあと3~4人は当たり選手が出ないと大当たり年とは言えない。
今年の特徴と比べると
もう一つ当たり年の特徴を挙げると、
プロ入り後に活躍している姿だけを見るとあまりわからない傾向が存在している。
ブロマガの頃からしつこく書き続けていることではあるが、
それは高校時代のポジション。
ほとんどがセカンドを除いたセンターラインと、
日本では最も身体能力の高い選手が入ることも多いピッチャーに集中しているのだ。
プロ入り後こそファーストやレフトとして大成した選手でもその傾向は変わっていない。
一方でファースト、サード、レフトの3ポジションは
数えるほどしかいない。
一部判明していない選手もいるが、
今回挙げた当たり年の選手の中でこの3ポジションに該当するのは
レフトが岡田貴弘(推定)のみ、
サードが石井義人、古木克明の2人、
ファーストは1人もいない。
他の年にファースト出身が全くいないわけではなく、
現役の当たり選手では中村剛也と中村晃がいるが
この2人はプロに入ってコンバートが可能だった選手でもある。
高校時代が一塁手でプロ入り後もほぼファースト専任だったのは
清原以降見当たらない。
これらの点から今年のドラフト候補を考えてみると、
必ずしも上位候補とまでは目されていないが、
そこそこの力を持っているショートが少なくないのはプラス材料になる。
長打力の高い上位候補となると
昨年同様サードやファースト、レフトに集まっているが、
この中に今より難しいポジションにコンバートしても問題なさそうな選手
が何人いるかがカギになってくると思われる。