ここでは今もごくたまに見かける
PAP(Pitcher Abuse Point)について、
2005年以降のPAPが多い主な投手をあげてみよう。
このPAPについてはその価値に疑問符をつける人が多く
少なくとも日本で用いられることはほぼない。
なおPAP自体は日本でも目新しいものではない。
たしかかなり前には李啓充氏か誰かが紹介していたので
指標にさほど詳しくない私でも知っていたし、
2013年の日本シリーズで田中将大が160球完投した際に
取り上げられたのは記憶に新しいところだと思う。
というか田中の起用を批判してたのも
最近PAPを使った記事を書くのも同じ人*1か。
目次
NPBのPAPランキング
では見てみよう。
以前は100万超の選手も珍しくなかったが
最近は前に比べればかなり少なくなってきている。
2011年に激変したということは
リーグ全体の投打のバランスの要素が大きいと思われる。
あとは同じイニング数、打者数でも球数を消費しやすい選手は
どうしてもこの値が増えやすい傾向がある。
PAPの特徴
PAPという指標の価値が難しい点の1つは
1試合だけの結果が非常に大きな影響を与えてしまう点だろう。
中でも極端な例として出たのが2006年の有銘兼久である。
彼は8月25日の試合で延長12回188球を投げぬいたが
この1試合だけでPAPは68万を超えてしまった。
有銘がPAPでプラスを記録したのは先発12試合中
次の9月1日に投げた116球(4 2/3回)の+4096だけなので
たった2試合、
実質的には1試合だけでランキングが2位になったわけだ。
一方で
完投数が多くてもPAP過多には必ずしも直結しないのが
この指標の特徴でもある。
つい最近の例だと2020年の大野雄大は
20先発中10完投を記録し
100球未満は3試合しかなかったが、
120球超も計4試合で最多は7月31日の128球。
2020年の試合数の少なさもあいまって
PAPは10万すら切る結果となった。
球数を使わない省エネ投球が可能なら
こういうことも起こりうるのだ。
PAPの問題点
最大の疑問点は
「MLBの中4日ローテを前提とした指標を
中6日が主流のNPBに当てはめる意味があるのか」だ。
現在のNPBではずっと中5日で投げさせることも多くなく
中6日での調整がほとんどになっている。
これは選手を甘やかしているなどということではなく
月曜日が常に休みになる
NPBの日程に合わせやすいという側面の方が強そうだ*2。
2006年の一場靖弘のように中4~5日が多い*3登板だったなら
PAPを単純に当てはめてもいいだろうが、
中6日の場合は数十年分のデータを合わせたうえで
その後の故障や不調との因果関係を
極端な例だけで当てはめることをせずに精査していく必要がある。
2007年、2009~10年の涌井のようなケースもあるが、
それまでの年間のイニング数や球数など
他にも考えられるポイントがあるため
簡単に断定するわけにはいかない。
他にも
イニング数や
ベンチ前キャッチボールも含めたイニング間投球練習を
加味しなくていいのか、
特に一昔前までのNPBの投手が高校、大学、社会人などで
超のつく酷使を潜り抜けてきた超人揃いである点を考えなくてよいのか、
対戦相手や時代によって
全力投球がどの程度の割合を占めているのか、など
精査が必要な点はいくつもあるし、
それこそNPB批判に結び付けたい場合*4でも
検証すべき材料はいくつも思い浮かべることができる。
この指数自体は
あらかじめ計算式さえ作っておけば
比較的簡単に出せるものだし
登板の傾向を眺めるには楽しめなくもないので、
読み物として見るぶんには面白い物だと思うが
これを使って何らかの論評の結論を出すには
かなり無理があるように見える。